第9章(工業簿記)

工業簿記の基礎・費目別計算

ここから新世界。「作るのにいくらかかったか」を計算する

1工業簿記とは:商業簿記との違い

商業簿記工業簿記
会社買って売る(小売・卸)作って売る(製造業)
原価仕入れた値段がそのまま原価材料・人件費・電気代…を集計して計算
主な目的外部報告原価管理・価格決定にも使う

工場で発生する原価を、製品1個あたりいくらかまで計算するのが原価計算。簿記2級の40点分を占めますが、パターンが決まっていて満点を狙える分野です。

💡 原価計算期間は1か月。商業簿記の決算(1年)と違い、毎月原価を計算して締めます。

2原価の分類:2つの軸で4マスに分ける

軸①:何にかかったか(形態別)

材料費
モノを使った
(木材・部品・塗料)
労務費
ヒトが働いた
(賃金・給料)
経費
それ以外
(電気代・減価償却費)

軸②:どの製品にかかったか追えるか

直接費(製品ごとに追える)間接費(追えない・共通)
材料費直接材料費(主要材料・買入部品)間接材料費(接着剤・工場消耗品)
労務費直接労務費(工員の直接作業賃金)間接労務費(監督者給料・間接作業)
経費直接経費(外注加工賃)間接経費(電気代・工場減価償却費)
📌
間接費3兄弟はまとめて製造間接費と呼びます。直接費は製品へまっすぐ、間接費はいったん集めてから配る——これが工業簿記の基本構造です。

3勘定連絡図:原価が流れる地図(最重要!)

🪵
材料・賃金・経費
費目別に集計
🏭
仕掛品
直接費はここへ直行。
間接費は製造間接費経由で配賦
📦
製品
完成したら振替
💰
売上原価
売れたら振替
借方貸方
仕掛品 800(直接材料費)
製造間接費 200(間接材料費)
材料 1,000
📌
仕掛品(しかかりひん)=作りかけの製品(資産)。工業簿記の仕訳は、この勘定連絡図のどこからどこへ流すかを書いているだけ。図が頭に描ければ仕訳は自動的に書けます

4材料費:予定消費価格と差異

材料の実際価格は毎回変わって計算が遅くなるので、予定消費価格であらかじめ計算するのが実務的。すると実際との差異が出ます。

例:予定消費価格@¥100×実際消費量50kg=¥5,000で計上。実際消費額は¥5,300だった。

予定消費額5,000
実際消費額5,300
材料消費価格差異△300(不利)
借方貸方
材料消費価格差異 300材料 300
💡 予定<実際=使いすぎ→不利差異(借方差異)。逆なら有利差異(貸方差異)。差異は会計年度末に売上原価へ振り替えます。材料の棚卸減耗は「棚卸減耗損→製造間接費」へ。

5労務費と経費

労務費:消費額=当月支払+当月未払−前月未払

当月支払10,000
当月未払2,000
前月未払1,500
当月消費額10,500

給与計算期間(例:20日締め)と原価計算期間(月末締め)のズレを未払で調整するイメージ。賃率も予定賃率を使えば賃率差異が出ます(考え方は材料と同じ)。

経費の4分類

種類当月消費額の決め方
支払経費当月の支払額(未払・前払調整)外注加工賃・修繕費
月割経費年額÷12など月割り減価償却費・保険料
測定経費メーターの測定値電力料・水道料
発生経費発生額棚卸減耗損

6理解度チェック

Q1. 工場監督者の給料は何に分類される?
Q2. 直接材料費を消費したとき、材料勘定からどこへ振り替える?
Q3. 予定消費額5,000・実際消費額5,300のときの材料消費価格差異は?
Q4. 工場の電力料の当月消費額はどうやって決める?

7まとめ

4行でおさらい

① 原価は材料費・労務費・経費×直接費・間接費で分類。間接費はまとめて製造間接費。

② 勘定連絡図:材料・賃金・経費→仕掛品(直接費は直行、間接費は製造間接費経由)→製品→売上原価。

③ 予定価格・予定賃率で計算し、実際との差は消費価格差異・賃率差異。予定<実際は不利(借方)差異。

④ 労務費の消費額は「支払+当月未払−前月未払」。経費は支払・月割・測定・発生の4タイプ。