第6章(商業簿記)

株式会社の純資産

資本金・準備金・剰余金——純資産の中身を理解する

1純資産の中身(株主資本の構造)

3級では「資本金・繰越利益剰余金・利益準備金」だけでしたが、2級では純資産の全体像が問われます。

株主資本イメージ
資本金会社の元手の本体
資本剰余金資本準備金元手の予備(払込みの一部)
その他資本剰余金元手系の自由なお金
利益剰余金利益準備金もうけの強制積立
繰越利益剰余金・任意積立金もうけの蓄積(配当の原資)
📌
大きく「元手系(資本〜)」と「もうけ系(利益〜)」の2系統。この区別が配当のルールにも合併にも効いてきます。ほかに評価・換算差額等(その他有価証券評価差額金)も純資産の仲間。

2株式の発行(設立・増資)

原則:全額資本金。容認:半分まで資本準備金にできる

増資で株式を発行し、払込金¥1,000,000が当座預金に入金。会社法の最低額を資本金とする。

借方貸方
当座預金 1,000,000資本金 500,000
資本準備金 500,000
「最低額」=1/2まで準備金OK
かかった費用科目
会社設立のための費用創立費
設立後、開業準備の費用開業費
増資のための費用株式交付費
💡 申込証拠金方式:申込時は別段預金/株式申込証拠金で受け、払込期日に当座預金・資本金へ振り替えます。

3剰余金の配当と準備金の積立ルール

配当するときは、会社法のルールで準備金の積立が強制されます。3級より計算が細かくなります。

⚖️
積立額=配当額×1/10。ただし「資本準備金+利益準備金」が資本金×1/4に達するまででストップ。両方計算して小さい方を積み立てます。

例:繰越利益剰余金から配当¥100,000(資本金¥1,000,000・資本準備金¥150,000・利益準備金¥90,000)

① 配当×1/1010,000
② 資本金×1/4−積立済準備金250,000−240,000
=10,000
小さい方10,000
借方貸方
繰越利益剰余金 110,000未払配当金 100,000
利益準備金 10,000
💡 その他資本剰余金から配当したときは、積み立てるのは利益準備金でなく資本準備金。「元手系から配ったら元手系に積む」——2系統の対応関係です。
💡 任意積立金(新築積立金・別途積立金など):株主総会の決議で繰越利益剰余金から積み立てる自主的な貯金。「繰越利益剰余金/別途積立金」のように純資産内部での振替(計数の変動)です。

4合併(吸収合併とのれん)

他社を吸収合併したら、相手の資産・負債を時価で受け入れ、対価として自社株式を交付します。差額がのれんです。

例:諸資産(時価¥500,000)・諸負債(時価¥300,000)のB社を吸収合併し、株式(時価¥250,000、全額資本金)を交付。

受入純資産500,000−300,000
=200,000
vs
支払対価(株式)250,000
のれん50,000
借方貸方
諸資産 500,000
のれん 50,000
諸負債 300,000
資本金 250,000
📌
のれん=純資産より高く買った分(ブランド力・信用への対価)。20年以内に償却します(第4章)。逆に安く買えたら負ののれん発生益(収益)で、こちらは償却せず当期の収益です。

5株主資本等変動計算書(第2問の常連)

純資産の各項目が期首→期末でどう動いたかを一覧にした財務諸表。B/S・P/Lに続く「第3の計算書」です。

株主資本等変動計算書(イメージ・一部抜粋)
資本金資本準備金利益準備金繰越利益剰余金
当期首残高1,000,000150,00090,000300,000
剰余金の配当10,000△110,000
新株の発行500,000500,000
当期純利益120,000
当期末残高1,500,000650,000100,000310,000
💡 解き方は「期中の純資産が動く仕訳(配当・増資・純利益の振替)を書いて、各列に転記するだけ」。仕訳さえできれば得点源になります。減少は△で表します。

6理解度チェック

Q1. 株式発行の払込金のうち、資本金にしなくてよいのは最大いくらまで?
Q2. 増資のためにかかった費用の科目は?
Q3. その他資本剰余金から配当したとき、積み立てるのは?
Q4. 合併で受入純資産より安い対価で買収できたときに計上するのは?

7まとめ

4行でおさらい

① 純資産は「元手系(資本金・資本剰余金)」と「もうけ系(利益剰余金)」の2系統。

② 株式発行は原則全額資本金、容認で1/2まで資本準備金。設立費用は創立費、増資費用は株式交付費。

③ 配当時の準備金積立=配当×1/10と「資本金×1/4−積立済準備金」の小さい方。元手系から配当なら資本準備金に積む。

④ 合併は時価で受け入れ、対価との差額がのれん(高い)/負ののれん発生益(安い)。純資産の動きは株主資本等変動計算書に。