第5章(商業簿記)

引当金・税金・税効果会計

「将来の支払いに備える」と「会計と税法のズレを調整する」

1引当金ファミリーが増える

3級の貸倒引当金に加えて、2級ではいろいろな引当金が登場します。考え方は全部同じ:「当期が原因で、将来発生しそうな費用」を先に計上しておく

引当金何に備える?繰入時の費用科目
修繕引当金来期予定の修繕修繕引当金繰入
商品保証引当金売った商品の無料修理保証商品保証引当金繰入
賞与引当金来期支給のボーナス(当期分)賞与引当金繰入
役員賞与引当金役員へのボーナス役員賞与引当金繰入
退職給付引当金従業員の退職金退職給付費用(←繰入と言わない)
📌
使うとき(実際に修繕・支給したとき)は引当金を取り崩す。引当金を超えた分だけ当期の費用になります。退職給付だけ費用科目名が特殊なので注意。

例:修繕を行い¥30,000を現金払い(修繕引当金¥20,000あり)

借方貸方
修繕引当金 20,000
修繕費 10,000
現金 30,000
💡 貸倒引当金も2級では進化:得意先ごとに見積もる個別評価と一括の一括評価、売掛金など営業債権向けの繰入は「販売費及び一般管理費」、貸付金など営業外債権向けは「営業外費用」に区分されます。

2法人税等の流れ(中間納付→確定→納付)

💸
① 中間納付
仮払法人税等
(資産)で仮払い
🧮
② 決算で確定
法人税等を計上し
不足分は未払法人税等
🏛️
③ 確定申告・納付
未払法人税等を
取り崩して納付

決算で法人税等¥50,000が確定(中間納付¥20,000済み)。

借方貸方
法人税、住民税及び事業税 50,000仮払法人税等 20,000
未払法人税等 30,000
💡 税務調査などで追加で払う税金は追徴法人税等、戻ってくる税金は還付法人税等。課税所得は「税引前当期純利益±調整」で計算され、ここから次の税効果会計につながります。

3税効果会計:なぜ必要?

会計が考える費用と、税法が認める費用(損金)にはズレがあります。例えば貸倒引当金を多めに積んでも、税法は一部しか認めてくれません。すると——

📗
会計の利益
引当金繰入を
費用にした利益
📕
税法の所得
認められない分を
足し戻した所得
😵
P/Lがチグハグ
利益と法人税等が
対応しなくなる

そこで「税金の前払い・繰延べ」を資産・負債として計上し、P/Lの法人税等を会計の利益に対応させるのが税効果会計です。

例:貸倒引当金繰入¥1,000が損金不算入(法定実効税率30%)

借方貸方
繰延税金資産 300
1,000×30%=税金の前払い
法人税等調整額 300

将来、実際に貸し倒れて損金と認められたとき(差異の解消時)に逆仕訳をします。

2級で出る一時差異計上するもの
貸倒引当金の繰入限度超過繰延税金資産×実効税率
相手は法人税等調整額
減価償却費の償却限度超過
その他有価証券の評価差額繰延税金資産/負債×実効税率
相手はその他有価証券評価差額金(P/Lを通さない)
📌
将来減算一時差異(将来、税金が減る)→繰延税金資産。将来加算一時差異(将来、税金が増える)→繰延税金負債。2級はほぼ繰延税金資産のパターンです。

その他有価証券の税効果:時価が¥5,000上昇(実効税率30%)

借方貸方
その他有価証券 5,000繰延税金負債 1,500
その他有価証券評価差額金 3,500

4理解度チェック

Q1. 退職給付引当金を繰り入れるときの費用科目は?
Q2. 貸倒引当金繰入¥1,000が損金不算入(実効税率30%)。借方に計上するのは?
Q3. その他有価証券の評価差額に税効果を適用するとき、P/Lの法人税等調整額は?
Q4. 修繕引当金¥20,000があるのに修繕費¥30,000を支払った。費用になる金額は?

5まとめ

4行でおさらい

① 引当金は「当期が原因の将来費用」の前倒し計上。使うときは引当金から取り崩す。退職給付だけ費用科目が「退職給付費用」。

② 法人税等は中間納付(仮払法人税等)→決算で確定(未払法人税等)→納付の3ステップ。

③ 税効果会計は会計と税法のズレ(一時差異)×実効税率を繰延税金資産・負債に。相手科目は法人税等調整額。

④ その他有価証券の税効果だけはP/Lを通さず、評価差額金の中で調整する。