第11章(工業簿記)

総合原価計算

大量生産の原価は「ならして」計算する

1総合原価計算とは:個別との違い

個別原価計算(第10章)総合原価計算
生産形態注文ごと(オーダーメイド)同じ製品を大量生産
集計単位製造指図書ごと月単位でまとめて→1個あたりに割る
原価の分け方直接費/間接費直接材料費/加工費の2つだけ
📌
総合原価計算では原価を「直接材料費」と「加工費(それ以外全部)」の2つに分けます。理由は次の「完成品換算量」の考え方が違うから。

2完成品換算量:作りかけは「何個分」?

月末に作りかけ(仕掛品)が残っていたら、完成品と同じ1個とは数えられません。進捗度を掛けて「完成品なら何個分か」に換算します。

投入タイミング月末仕掛品100個(進捗度50%)の換算量
直接材料費工程の始点で全部投入100個(最初から全部入っている)
加工費進捗に応じて徐々に発生100個×50%=50個分
💡 カレー工場のイメージ:具材(材料)は最初に全部鍋に入れるが、煮込み(加工)は半分しか終わっていない——だから材料は100%、加工は50%。

3月末仕掛品の評価:平均法と先入先出法

月初仕掛品がある場合、「月末に残っているのは古い分?新しい分?」の仮定で2つの方法があります。

方法考え方月末仕掛品の単価
平均法月初と当月投入を混ぜて平均(月初原価+当月原価)÷(完成品量+月末換算量)
先入先出法古い月初分から先に完成させた当月投入分の単価だけで計算

例(加工費・平均法):月初¥2,000+当月¥10,000、完成100個・月末換算量20個分

原価合計12,000
÷
完成100+月末20120個分
単価@100
月末仕掛品@100×20=2,000

完成品原価=12,000−2,000=¥10,000。「ボックス図」(左に月初・当月投入、右に完成・月末を書くT字の図)を描いて整理するのが定石です。

4仕損・減耗:失敗作の原価は誰が負担?

製造中の失敗品(仕損)や蒸発などの目減り(減損)が正常な範囲なら、その原価は良品に負担させます(度外視法)。

仕損の発生点負担者計算のコツ
工程の終点(または月末仕掛品の進捗より後)完成品のみ負担仕損品を完成品にくっつけて計算
月末仕掛品の進捗より前(または始点)完成品と月末仕掛品の両者負担仕損品をいなかったことにして計算
📌
判断基準はただひとつ:「月末仕掛品は、仕損の発生点を通過したか?」 通過した(発生点≦月末の進捗度)なら月末仕掛品も仕損を出した責任あり→両者負担。まだ通過していない(発生点>月末の進捗度)なら→完成品のみ負担

5いろいろな総合原価計算

種類使う場面計算のポイント
工程別2つ以上の工程を通る第1工程の完成品原価を前工程費として第2工程へ(材料と同じ扱い・始点投入)
組別違う種類の製品(A組・B組)直接費は組ごと、共通の加工費は組間接費として配賦
等級別同種でサイズ違い(S・M・L)完成品原価を等価係数×数量(積数)の比で各等級に按分
💡 どれも土台は単純総合原価計算(ボックス図)。「前工程費は始点投入の材料と同じ」「等級別は積数で割るだけ」と整理すれば怖くありません。

6理解度チェック

Q1. 月末仕掛品100個(進捗度40%)の加工費の完成品換算量は?
Q2. 始点投入の直接材料費について、月末仕掛品100個(進捗度40%)の換算量は?
Q3. 月末仕掛品を「当月投入分の単価」だけで計算する方法は?
Q4. 工程の終点で発生した正常仕損の原価は誰が負担?
Q5. 第1工程完成品の原価は、第2工程では何と呼ばれる?

7まとめ

4行でおさらい

① 総合原価計算は大量生産用。原価は直接材料費(始点投入→数量100%)と加工費(×進捗度)に分ける。

② 月末仕掛品の評価は平均法(混ぜて平均)と先入先出法(当月単価のみ)。ボックス図で整理。

③ 正常仕損は良品が負担:月末仕掛品が発生点を通過していれば両者負担、未通過なら完成品のみ負担。

④ 工程別は前工程費=始点投入材料、組別は組間接費を配賦、等級別は積数で按分。