第12章(工業簿記)

標準原価計算・直接原価計算

第5問の主役。「あるべき原価」との差を分析し、利益を予測する

1標準原価計算:目標と実際を比べる

あらかじめ「製品1個あたりのあるべき原価(標準原価)」を決めておき、実際原価との差異を分析してムダを見つける方法です。

標準原価カード(製品1個あたり)の例
直接材料費標準単価@¥100×標準消費量2kg=¥200
直接労務費標準賃率@¥120×標準時間1時間=¥120
製造間接費標準配賦率@¥80×標準時間1時間=¥80
合計(原価標準)¥400/個
💡 記帳方法は2つ:パーシャル・プラン(仕掛品勘定を実際原価で受け入れ→仕掛品で差異が出る)とシングル・プラン(標準原価で受け入れ→各費目で差異が出る)。「パーシャルは仕掛品で差異」と覚えます。

2差異分析①:直接材料費と直接労務費

差異は「価格×量」の長方形で考えます。材料も労務費も構造は同じ。

直接材料費差異計算式
価格差異(値段のせい)(標準単価−実際単価)×実際消費量
数量差異(使いすぎのせい)標準単価×(標準消費量−実際消費量)
直接労務費差異計算式
賃率差異(時給のせい)(標準賃率−実際賃率)×実際作業時間
時間差異(かけすぎのせい)標準賃率×(標準時間−実際時間)

例:標準@100×2kg/個、当月100個生産。実際は@105×210kg=¥22,050

価格差異(100−105)×210
=△1,050 不利
数量差異100×(200−210)
=△1,000 不利
総差異△2,050 不利
📌
覚え方:「内側が標準、外側が実際」の囲み図(差異分析図)を描き、価格差異はヨコ長(×実際量)、数量差異はタテ長(×標準単価)。計算結果がマイナス=不利差異(借方差異)です。

3差異分析②:製造間接費(3分法)

差異意味計算(公式法変動予算)
予算差異お金を使いすぎ予算許容額−実際発生額
能率差異作業をかけすぎ標準配賦率×(標準時間−実際時間)
操業度差異設備を遊ばせた固定費率×(実際時間−基準操業度)
💡 第10章の予定配賦の差異分析(予算差異+操業度差異)に「能率差異」が加わった3分法が標準原価計算の定番。ここもシュラッター図で一網打尽にできます。

4直接原価計算:固定費を分けると利益が読める

通常のP/L(全部原価計算)は固定費が製品原価に混ざるため、「たくさん作ると利益が増えて見える」ゆがみがあります。変動費と固定費を分けて表示するのが直接原価計算です。

💴
売上高
📦
変動費
変動売上原価+
変動販売費
💪
貢献利益
固定費を回収する力
🏢
固定費
固定製造原価+
固定販管費
🏁
営業利益
📌
直接原価計算は社内の利益計画用(外部報告には使えない)。外部報告用に直すときは固定費調整を行います。

5CVP分析:損益分岐点を求める

Cost(原価)・Volume(販売量)・Profit(利益)の関係を分析。「いくら売れば赤字を脱出?」に答えます。

例:販売単価@¥1,000、変動費@¥600、固定費¥1,200,000。

貢献利益率(1,000−600)/1,000
=40%
損益分岐点売上高固定費÷貢献利益率
1,200,000÷0.4=3,000,000
知りたいこと公式
損益分岐点売上高固定費÷貢献利益率
目標利益達成の売上高(固定費+目標利益)÷貢献利益率
安全余裕率(実際売上高−損益分岐点売上高)÷実際売上高
💡 すべての出発点は「売上−変動費=貢献利益が、固定費とぴったり同じになる点」。公式を忘れたら「貢献利益=固定費」の方程式を立てれば導けます。

6工業簿記の財務諸表・本社工場会計

論点ポイント
製造原価報告書(C/R)材料費・労務費・経費→当期総製造費用→当期製品製造原価を計算する表。P/Lの売上原価につながる
本社工場会計工場に独立した帳簿を持たせる。本支店会計と同じく「工場」勘定(本社側)・「本社」勘定(工場側)で記録
📌
製造原価報告書では、製造間接費の配賦差異を実際発生額に加減して「予定配賦額」に直す行が出ます。不利差異は売上原価に加算です。

7理解度チェック

Q1. 価格差異の計算で使う消費量は?
Q2. 仕掛品勘定に「実際原価」で受け入れる標準原価計算の記帳法は?
Q3. 売上高−変動費=?
Q4. 固定費1,200,000円・貢献利益率40%のときの損益分岐点売上高は?
Q5. 工場側の帳簿で、本社とのやりとりに使う勘定は?

8まとめ

4行でおさらい

① 標準原価計算は「あるべき原価」と実際を比較。材料費=価格差異+数量差異、労務費=賃率差異+時間差異。

② 価格・賃率差異は×実際量、数量・時間差異は×標準単価。マイナス=不利(借方)差異。

③ 直接原価計算は変動費と固定費を分け、売上−変動費=貢献利益で利益計画に使う。

④ CVP分析:損益分岐点売上高=固定費÷貢献利益率。迷ったら「貢献利益=固定費」の方程式へ。

🎉 全12章おつかれさまでした! ここまでの内容が頭に入ったら、過去問演習(第1問の仕訳→第4・5問の工業簿記→第2・3問の順がおすすめ)に進みましょう。